お単衣の装い..、みさやま紬と川平織(あえて単衣として)

みさやま紬と川平織 お単衣の"着物と帯のあわせ"..


ご紹介をさせて頂いたお単衣の"きものあわせ"では、夏久米島/下井紬(単衣/夏織)のお着物と言う"単衣""夏季"を予定して織られた織物を取り上げてみました。

今回は、特に"単衣"とか"夏季"と言う時季を予定して織られた織物ではない紬織を、"単衣きもの"として取り上げてみたいと思います。

ちょっと余談なんですが..、
"単衣"を予定して織られている紬織物には、一般的にはどんなお品があるかと言うご質問をちょくちょく頂くことがあります。

現在、お単衣を予定して織られた紬織..、お単衣にお召しになると感じが良い紬織としては、縮結城、本塩沢、白鷹御召、夏久米島...、と言ったところだと思います。

要するに、強撚糸が緯糸に使われて生地に「しゃりしゃり」とした質感を保っている織物が単衣の着物に向いている訳です。
また、ここに挙げた紬織ではないですが、生糸(精練されていない糸)で織られた紬織(生紬なんて呼ばれることもあります)なども単衣に良いとされています。

単衣を予定して織られた紬織は、概して..、裏地を付けなくても"肌触り"も良いんですね。

さて、こちらに掲載をさせて頂いた紬織は「みさやま紬」...、松本市に三才山と言う土地で織られている草木染め手織紬です。この"みさやま紬"は、土地の名称が付けられてはいますが、横山俊一郎氏だけが手掛ける手織紬です。

このみさやま紬ですが、時折、緯糸の質感が変わった反物を見掛けることがありますが、概ね、上質な紬糸が緯糸に使われ"さらっ"とした質感を保っています。

この、真綿の感触と言うより、ちょっと"さらっ"とした感じが袷のお着物としてだけではなくて、お単衣としてお召しになっても"肌の触り"も良いのです。ですから、あえて"単衣"の着物として取り上げてみました。

掲載させて頂いたみさやま紬は、薄グレイ色ときなりの細かな"みじん格子織"です。

この色なんですが"栗"から抽出された色なので、秋の単衣をご紹介する際に掲載をしようかな..、と思っていたのですが、色そのものも、また、この細かな"みじん格子"も、特に暑苦しさを想わせない彩色デザインでしたので、取り上げてみました。
また..、以前、ご紹介をさせて頂いた夏久米島や下井紬/単衣・夏織が、特に"薄色"を意識した色目でしたので、こうした薄グレイ色のお着物を初夏のお単衣きものとして取り上げるのも"着物あわせ"の参考となるのではないかと思ったこともあります。



みさやま紬と川平織こうした薄グレイ色の"みじん格子"の紬織ですが、単衣の時季に限定することなくお召し頂くことが出来ます。ただ、こうした色目の紬織は"あわせる帯"の印象で随分と着物の印象が変わって来るものです。

一方、お単衣+夏季だけを予定した着物の場合は、色目だけではなくて、素材そのものに季節感を伝えます。
"透けている"とか"白い"場合が多く、素材だけで"単衣"とか"夏"を意識させる訳ですね。


こちらに掲載をさせて頂いたのは、川平織の名古屋帯。
石垣島在住の深石美穂氏が制作する織物です。

生繭糸を使い織り上げられた紬織の名古屋帯ですが、これも、特に単衣だけを意識した織物ではないのですが、生繭糸が使われているため独特の"さらっ"とした質感があります。

使われている彩色をも想えば...、単衣の時季には、馴染みやすい織帯です。この川平織の印象ですが、どちらかと言うと"春らしい""単衣らしい"感じなのです。

みじん格子のみさやま紬に川平織の名古屋帯。
もちろん、お単衣でなくても良いかも知れませんが...
こうした"着物あわせ"は、着物とか、織物とかに対する深い趣味性を伝える"あわせ"となります。

趣味性と言っても..、民芸的な雰囲気やよく言われる"ざっくり"とした感じは、あまりありません。
ちょっと垢抜けした感じがしませんか?
コントラストの低い、薄色の彩色...、それも植物染料染めの彩色とみじん格子と幾何学的な絣文様が、垢抜けした雰囲気をつくっているのだと思います。

さて..、この着物と帯の"あわせ"のTPOです。
こうした"あわせ"は、着物を着られる方の"ご自分の楽しみ"の為の"あわせ"となります。ですから、"あらたまった感"などはありません。
僅かに意識しているのは"時季"だけです。
暑苦しい帯締/帯揚を避けて、あくまでも"単衣の季節"をこの"あわせ"で楽しむのです。

と言うことで、TPOを列挙してみると..

*舞台観劇。
*ギャラリー/画廊などでの催し。
*美術館/博物館などの展覧会。

着物で出掛ける自体が、そもそも、趣味的なのかもしれませんが、こうしたみさやま紬と川平織の単衣の着物と帯の"あわせ"は..、もう少し、さらに、お召しになられる方自身の"趣味や遊び"に関わる場所でお楽しみを頂くと良いかと思います。

薄グレイ色のみじん格子/みさやま紬ですが、こうした薄色の川平織と"あわせる"のではなくて、落ち着いた色調の帯と"あわせる"と秋を想わせる"単衣"をも演出出来ます。
そもそも..、グレイ色の無地感性の着物は"あわせる"帯や帯締/帯揚で、印象を変えやすいのです。

最後に...
松本市の三才山と言う山里と石垣島と言う離島で織られた織物が"垢抜け"した雰囲気をつくるのは面白い話かもしれません。様々な織物に触れていて感じるのですが、これまでどんな織物を織って来たかなどという"伝統"ではなくて、どんな"織物"を織ってみたいのかと言う気持ちが、織物の表情をつくっているのだと思います。

新垣幸子作品...、単衣からお使い頂けます/八寸名古屋帯

八重山上布 八寸名古屋帯新垣幸子氏の染織作品のご紹介です。

絣織が織り込まれた八寸名古屋帯。
彩色は紅露.福木.琉球藍。

これまでご紹介をさせて頂いて来た八重山上布に比べて少々落ち着いた風情を想わせる作品(帯地)です。
これまでの作品には、八重山と言う土地を想わせながらも、新垣幸子氏自身の創作性を強く感じられました。
それは色彩であったり、特有の染織手法であったり、色彩感性であったり..。

こちらに掲載をさせて頂いた作品は、ほぼ無地織の地色の中に緯絣で文様が織り込まれています。

一見すると何となく淡泊な印象として眼に映るかもしれませんが..、
実は、この作品にはこの作品の狙いがあるようです。

施された絣文様は、琉球の染織では、時折、見掛ける絣文様で、琉球の"雲"を意味する絣文様のようです。

この絣文様ですが、単彩ではあるのですが、かなり力強いのです。
多彩色の絣で織り込むには...、少々、大胆、且つ、強過ぎるのだと思います。

この作品...、帯地ですが、苧麻糸が使われた八重山上布でありながら"単衣"の時季よりお使い頂けるように織られています。
緯(よこ)に太く、しっかりした苧麻糸を打ち込んで行くことで厚みのある織物...、羽衣ごとき八重山上布と言うよりも、民芸を想わせる古代八重山上布と言う風情を感じさせます。

そもそも繊細な夏織物だけを想定した帯地ではないのです。

もしかしたら...、夏久米島かもしれないし
もしかしたら...、白鷹かもしれないし
もしかしたら...、縮結城かもしれない
また...、秋口の時季も意識すると、この色も悪くはありません。

この作品の地色ですが..、Blogに掲載をする際に、とても手を焼きました。
再現性の難しい色なのです。光の加減で赤みが強くなったり、落ち着いたりと...。

これは経糸に数色の色糸を配して...、且つ、緯糸には緯糸の色糸を入れる。生地の"面"は単彩のように..、少しだけ縞織として浮かび上がりますが..、おおよそは単彩の無地として眼に映るのですが、織物としては数色の色糸が織り込まれているのです。

こうした配慮は、「南洋の海のごとき彩色/板花織」の八重山上布の「緑色」と同じ配慮なのです。
無地だからと言って"真っ平ら"にしない。

彩色は控えめかもしれません。
"あざやかさ"という視点からは、他の作品よりも少々落ち着いているかもしれません。

ただ、単衣を想定した時...、単衣の着物がそこそこ質感ある織の着物であっても...、着物に馴染みやすい..、そして、あくまでも琉球染織であると言う印象を伝えてくれる帯となるかと思います。

お単衣の装い..、下井紬夏織と紬地辻ヶ花染め帯

辻ヶ花染め帯+下井紬夏織お単衣の"着物と帯のあわせ"...。
以前、お単衣のお着物としてオフホワイト系の無地織夏久米島を取り上げて"着物と帯のあわせ"をご紹介させて頂きましたが、今回は同じ紬織でも、もう少し色目や織の質感を感じさせる着物を取り上げてみたいと思います。

水色と乱縞が印象的な織物...、下井紬の単衣/夏織です。
下井紬とは、ちょっと聞き慣れない紬織かもしれません。

この織物は、先代からの信州紬を織る機屋なのですが、現在は織物商からの注文品だけを誂えています。信州紬と差別化されているのは、伝統的な信州紬にはない織の技法をも使われているため...、そして、そもそも、限られた販路だけにしか納められない織物であると言う理由で「下井紬」とされています。

掲載をさせて頂いた織物は、緯糸に撚糸を使い単衣/夏織として織られています。
織物としては夏久米島と近い構成ですが、夏久米島が久米島に自生する植物染料を使うのに対して、下井紬は、様々な植物染料に加えて、化学染料をも併用することで、多種多様な表情の織物が制作されています。

下井紬を使っていて、特徴的に感じるのは、地方の紬織物と比べて、少し垢抜けをした感じのする織物のように感じています。

紬糸がしっかり使われ、且つ、植物染料で糸染めされた織物..、それも縞や格子の織物であっても、下井紬からは民芸的な空気感はあまり感じられません。
この垢抜けた空気感は悪いものではありません。

民芸的、ざっくりとした感じの紬織では適わなかった装いを楽しむことが出来るのですから...

掲載をさせて頂いている下井紬は、まさに単衣/夏が意識された彩色とデザインですね。
縞織であっても、乱縞で織られているので、粋な雰囲気とはならない..、もちろん、水色と白と言うコントラストの低い色調の縞織なんですが..。

この着物だけを想っても..、街着+余所行き感の着物となります。
余所行きと言っても、あまり「あらたまった感」の低い余所行きに留まるかと思います。
要するに、あくまでもご自分が楽しむための着物と言う位置付けと思います。




辻ヶ花染め帯/森健持+下井紬夏織この水色の下井紬の単衣/夏織に、座繰糸で織られた紬地に辻ヶ花で染め描かれた染め帯を"あわせ"てみました。

"辻ヶ花"と言うとちょっと厚ぼったい風合いをイメージされるかもしれませんが、ここでは座繰糸で織り上げられた紬地を素材としているの"さらっ"とした質感なのです。

それと、この辻ヶ花には、あえて彩色が挿し込まれていません。

この素材感と無彩色の感覚は、"辻ヶ花"でもありながら、単衣の時季にも不自然な感じもなく、また、"辻ヶ花"特有の時代的な印象も希薄で..、都会的な雰囲気に仕上がっているのです。

多彩色の染め帯では、この水色印象の紬には"暑苦しい"こともあるかもしれません。
軽い単衣を意識した塩瀬の染め帯も良いかと思いますが、ただ、乱縞の紬織との相性も想定しなくはなりません。

この下井紬の辻ヶ花を"あわせ"ることで、ちょっとした"小さっぱり"とした"はなやかさ"を感じさせてくれるような気がするのです。
紬の単衣を"綺麗な印象"でまとめていると言う感じになると思います。


TPOとしては...

*食事会や同窓会などの"集い"や"宴"。
*ギャラリー/画廊などでの催し。
*美術館/博物館などの展覧会。

辻ヶ花を使うことで多少のはなやかさを想わせることは出来ても、「あらたまった感」を表現するには足らないと思います。但し、街着以上の雰囲気は確実に感じられる"あわせ"となるかと思います。

ここでは"あわせ"ていないのですが、帯締と帯揚を選ぶ際に、少しだけ色を付けて、軽いアクセントとしても良いかもしれません。
また、半衿は「白色」を推奨します。


*下井紬に使われている染料:紫根 インディゴ 化学染料
*辻ヶ花の制作者:森健持

新垣幸子作品...、絣と彩色の絶妙な調和

八重山上布 新垣幸子 絽織新垣幸子氏の染織作品のご紹介です。

今回は着尺(お着物)として織られた作品のご紹介です。

そもそも帯地ひとつを取り上げてみても、その彩色の豊かさやデザインの巧みさは卓絶した技術と感性を想わせてくれます。
まず、八重山上布であると言う前に、某かの「テーマ」が伝わってくるのです。作品性と言うものが帯地ひとつにもしっかりと込められているんですね。

さて..、着尺の制作となると、どうやら帯地以上に要求されるものがあるようです。

まずは織糸となる苧麻糸の品質。
着物になる生地を織るためには、帯に使われる苧麻糸よりもずっと細い糸を必要とされるのです。
八重山上布は、平たく言えば、麻の着物。
薄ければ薄いほど...、しなやかでありながら、堅牢な生地であるべきなのです。
ですから、手績みの最も上質な苧麻糸が選ばれるのです。


そして、着物としての作品であるためには...
帯は着物にあわせられるもの...、しかし、着物は帯にあわせるものではなくて、袖通しされる「ひと」にあわせられるものです。

主役は、あくまでも「ひと」であって、八重山上布であっても、着物は「ひと」を演出するものに留まります。

新垣幸子氏も、その「作品集」の中で、自身の作品を「用の美」として捉えておられます。
作品の中に織り込まれた個性やテーマなるものは、着物としての印象に馴染むものであるべきなのです。


こちらに掲載をさせて頂いた着尺は、新垣幸子氏の作品の中でも、とても完成度の高い作品です。

この作品ですが、単純な平織の苧麻織物ではありません。
写真が画像では確認し難いのですが、「絽織」として織られています(現時点で、苧麻織物に対して絽織を織り込む染織家を、私は存じ上げていません)。

そして、琉球染織にて伝統的とされる絣文様と南国を想わせる美しい彩色が施されているのが、もうひとつの特徴かと思います。

このお着物ですが、まさに「用の美」を意識が意識され、且つ、作品性をも込められています。

この作品に供されている苧麻糸は、極めて品質が高い...、要するに、手績みの糸としては極めて細いが使われています。その為、麻織物でありながらも、しなやかなのです。空気の如き軽く、身体に馴染みやすいのです。

彩色は南国を想わせる美しさを呈しています。
絣文様は、着物全体に織り込まれています。
琉球染織であり、また、八重山上布であると言うアイデンティティみたいなものがしっかりと伝わって来ます。

しかし、思う以上の個性的ではないのです。

これは新垣幸子氏の作品に対する配慮なのです。
着物それだけを個性的なものとしてしない...、
あくまでも袖通しされる「ひと」を自身の作品を通じて演出すると言う意識があるのです。

織り込まれた絣文様に、南国を想わせる美しい彩色が施されいるのです。そして、その彩色は、地色に対して同じ傾向の彩色...、馴染みやすい彩色とされているのです。

ですから、着物として袖通しされた時、絣織であっても、その絣だけが目立ってしまうことはないのです。
彩色だけが、または、絣織だけが際立っていない...、施された彩色と絣が、実に巧く調和している。


作品としてのテーマを保ちつつ、実用の美しさをも備えられた逸品です。

使用されている植物染料:福木 琉球藍 楊桃

新垣幸子作品/南洋の海のごとき彩色...、八重山上布.板花織九寸名古屋帯

八重山上布 板花織新垣幸子氏の染織作品のご紹介です。

絣織と花織が織り込まれた九寸名古屋帯。
彩色は八重山藍.福木.楊桃(やまもも)。

地色は、一見すると緑色一色として眼に映るかもしれませんが...、よく見ると緑色の色糸の間に黄色の色糸が織り込んであるのです。
ただ、緑色であれば良い訳ではなくて、緑色の無地に対して「深み」を感じさせる印象を伝えるための制作者の計らいのです。

八重山上布は八重山諸島に自生する植物を染料として彩色がつくられるのですが、この織り込まれた彩色に「深み」を感じさせる配慮は、八重山の自然の彩りを織物を通じて表現しようとしているのだと思います。
この緑色ですが、本当にただ草木染めを施したからと言って、誰でも表現できる色でもないようです。本当に、南国の自然を想わせる「緑」なんです。

それと、この帯地のデザインについて..

絣織と花織が織り込まれているのですが、これも八重山が意識されたデザインでもあるのです。

緯段状に織り込まれている花織は、八重山上布特有の板花織り。
そして、琉球の代表的な絣文様が配されています。絣は線で描いているかの様に綺麗です。

板花織と絣文様が地色の深みある緑色に対して、とても巧くバランスが取られています。
絣は、これ以上大きくても、また小さくてもいけない。
板花織の巾や間隔も巧いほどにちょうど良いのです。
決して、必要以上に個性的とはならないけれども、存在感を伝えてもいるのです。

絣と花織、そして、深みある彩色...、どれも八重山が意識された制作者の計らいなのです。

新垣幸子氏らしい作品です。

Fashion Inspiration

先日、amazon.co.jpで購入したお気に入りの本をご紹介します。

"ファッション・インスピレーション/Fashion Inspiration"
エリザベス・ウォーカー(著)
グラフィック社(刊)

どんな本なのかと言うと..、要するにポートレイト写真集です。
ただ、その内容がちょっと凄まじいんです。

テンガロンハットを被った若き日のポールニューマン、レザージャケットのジョージマイケル、煌びやかなドレスのマリリンモンロー...、着物姿でボーリングをする京都の芸者、ロイドメガネの藤田嗣治、パイプをくわえて日光浴をするウィリアムフォークナー(米国の小説家です/もちろん名前だけで読んだことなんてありません)...、若き日のオードリーヘップバーンやブリジットバルドー...、とどめは、1955年に日本の何処かの街角(交差点)で撮られた着物姿の女工さん(何故って感じですが、妙に違和感がないのも面白いんです)...。

アメリカ/ヨーロッパのファッションモデル、俳優、ミュージシャン、文化人、そして普通の人々(?)..、写真が記録した"ある時代"の"ある国"の"人々"が掲載されています。

誰もが着飾り、誰もが気取っています。

この写真に映っている人は、有名人/セレブであれ、ごく普通の人であれ..、時代を経ても、やたら"カッコいい"んです。

Fashionと言うもの"時代"や"文化"や"その人"の美意識が昇華されたものなのだと教えてくれそうな写真ばかりです。
掲載されている写真は470枚以上...、本そのものも分厚いんです。

title.jpg表紙の女性は...、英国のファッションモデルさんとの事です。

着ているスーツは、そこそこ時代を感じさせるものかもしれませんが..、撮影した写真家のセンスが良いのか、それともモデルさんの雰囲気なのか..、なんとなくIntelligenceなCultureを感じさせてくれます。


















"おまけ"として..、掲載されたポートレイトをちょっとだけご紹介します。

Charlotte.jpg英国の女優、歌手のシャーロットランプリング。

イタリア映画「愛の嵐」はランプリングの代表作。


この本のキャプションではメンズジャケットを着ていると記載されています。

ランプリングが着ているメンズジャケットも良いかもしれませんが、ランプリングがつくっている"Style"が、ポートレイトとして絶妙なバランスを保っている様に思います。

帽子とランプリングの顔の大きさのコントラスト、ランプリングの腕と足のコントラスト..、このポートレイトは、わざわざ演出したのではなくて、どうやら彼女が出ている映画の撮影の合間に撮られたもののようです。













Gere.jpg若き日のリチャードギアです。

1980年代初め「愛と青春の旅だち」と言うラブストーリを描いた映画がありましたね。主題歌も爆発的にヒットしました。

1990年代には「プリティ・ウーマン」。
こちらもラブストーリを描いた映画でした。

どちらもシンデレラストーリーでリチャードギアって嫌味なくらいカッコいいななんて思っていました。

リチャードギアと言えば、もうひとつ。

ラブストーリではないのですが、「アメリカン・ジゴロ」と言う映画が「愛と青春の旅だち」の少し前にありました。

「ビバリーヒルズの金持ち婦人を相手に稼ぎまくるジゴロ」と言う悪い男を演じているのですが、実は、とてもFashionableな映画でした。

映画はリチャードギアが演じる主人公がBenzのオープンカーに乗ってビバリーヒルズのGiorgio Armaniに入って行くシーンから始まるんです。


想えば..、当時の欧米+日本が、当たり前の様に華やいでいた時代だったんですね。

この写真集を捲っていると、映画やFashionが、時代を確実に写して取っていることを教えてくれるようです。

"ファッション・インスピレーション/Fashion Inspiration"
映画やFashion、音楽、カルチャーに関心のある方には、ちょっと面白い写真本かもしれません。

お単衣の装い..、夏久米島と首里織九寸名古屋帯

ルバースミヤヒラ吟子+夏久米島前回、夏久米島と桶絞り染めの九寸名古屋帯との"お単衣"としての"あわせ"を掲載致しました。

ご紹介をした単衣/夏季のお着物は、オフホワイトの無地織とは言え、久米島で織られた夏久米島です。
沖縄の織物です。そこで同じ沖縄で織られた帯地を取り上げて"琉球染織でのお単衣としてあわせ"をご紹介してみたいと思います。

掲載をさせて頂いたお着物は、前回にてご紹介をさせて頂いた琉球椎で織糸を糸染めされた夏久米島紬。
前回の写真画像と何となく色の感じが違って見えるのは、撮影の際の光の加減です(色温度と言うものの違いです)。

そして...、夏久米島と"あわせ"てみたのは首里織九寸名古屋帯。

制作者はルバースミヤヒラ吟子氏。

ルバースミヤヒラ吟子氏は、首里織にて人間国宝の認定を受けられた宮平初子さんの長女であり、後継者として首里織の保存制作をされています。
また、過去に、フランス.ゴブラン国立制作所開発研究所に留学された経歴を持ち、作品には伝統的な首里織に留まらない創作性がみられます。

現在、首里織の制作だけではなくて、沖縄県立芸術大学教授でもあり、また、米国メトロポリタン美術館客員研究員と言う職務を受けてもおられています。

ここでご紹介をさせて頂いているルバースミヤヒラ吟子氏の首里織ですが、伝統的な琉球の絣文様(ジンダマー)が花織として織り込まれています。彩色は、鮮やかで、強烈な印象の沖縄の彩色とは真逆な、美しい薄色で整えられています。

この花織の帯地ですが、決して、単衣だけを意識しておられた作品ではありません。

明るく、薄色の色調が整っている事と甘撚糸が織り込まれたかのような質感が、お単衣の時季に"あわせ"やすい印象を保っているのです(もちろん、夏季の帯ではありません)。


花織名古屋帯と夏久米島オフホワイトの無地織の着物と薄色の首里織。

必要以上の彩色が取り除かれた...、すっきりとした印象のお単衣の装いと言う感じになるかもしれません。

この首里織ですが...、写真画像でご覧頂いている以上に精緻な織が繰り返された織物です。もちろん、織糸は100%植物染料で染められています。薄色であっても決して色飛び退色可能性が低い程の染色堅牢度が施されています。

要するに、見た眼以上に質感/ボリュームある織物でもあるのです。

オフホワイトの無地織の着物に対して十分にアクセントとなる程の高い質感を保った帯となります。
ですから、薄色と薄色の...、着物と帯だからと言って帯締/帯揚をアクセントとしない方が良いのです。

それと...、このルバースミヤヒラ吟子氏の織物なんですが、いつもどこか格調みたいな空気が感じられるのです。
首里織は、そもそも、琉球王朝の王族と貴族の衣装を織る責務が科せられた織物です。
その首里織の根元的なDNAが、ルバースミヤヒラ吟子氏によって色濃く織り込まれているのかもしれません。


夏久米島とルバースミヤヒラ吟子氏の首里織名古屋帯との"あわせ"ですが...、桶絞り染め帯に比べて、見た眼の"お洒落感"はどうでしょうか?

桶絞り染め帯を"あわせ"とた時、この首里織の帯を"あわせ"と時、双方とも"印象は違う"けれども高い趣味性が感じられはしませんか?

装いの主役は、着物でも帯でもないのです(主役は着物を着るご本人なのです。)。
"あわせ"のポイントは、着物と帯のバランス感覚と"印象"です。

先ほど...
>双方とも"印象は違う"けれども高い趣味性が感じられはしませんか?
と書きましたが...、首里織と"あわせ"た場合の方が、趣味性が高いと同時に、"よりエレガントな印象"があるかと思うのです。
西陣織の保つ貴装感とか礼装感ではなくて、ちょっとした気品みたいなものです。

紬織のお単衣の着物...、余所行き感覚でもちょっと趣味的、そして、それに留まらず、気品を香らせる帯使いの"あわせ"となるかと思います。

まとめてみるとTPOの例は桶絞り染め帯と同じようなものとなるかと思います。

  • *食事会や同窓会などの"集い"や"宴"。
  • *ギャラリーなどでの催し。
  • *美術館/博物館などの展覧会。
  • *オペラ/クラシック、歌舞伎などの舞台鑑賞。

ただ、この首里織を帯として無地織の着物と"あわせ"るとするなら、桶絞り染め帯と比べて、もう少しエレガントな雰囲気となる...、と言うイメージです。

新垣幸子作品/絣織九寸名古屋帯..、modern art? 

新垣幸子 絣織の八重山上布新垣幸子氏の染織作品のご紹介です。

絣織の九寸名古屋帯。
彩色は琉球藍と椎。

伝統的な琉球の絣文様とは一線を画されています。

八重山上布と言う印象や概念を忘れてみると...、まるでmodern artを想わせる作品の表現力が感じられます。

「単純な思い付き」とか「奇の衒い」と言ったものはありません。

絣織と植物染めによって表現された「デザイン」には制作者の創造性が伝わって来るようです。

見た眼には個性的と感じられるかもしれませんが、ちょっと時間を掛けて眼にしていると...、ごく自然な存在感みたいなものが伝わって来るのです。

藍と灰色、きなり..、絣織で表現された「デザイン」。
大胆でもありながらも、違和感を感じさせない調和が保たれているのです。

誰にでも出来ることではありません。
卓絶した染織技術と豊かな感性、そして、八重山上布と言う織物に対する愛情が相俟って生まれてくる作品なのだと思います。


*「八重山上布」ついて...

八重山上布は、主に石垣島で生産される麻織物で、その起源は定かではありませんが、少なくても琉球王朝時代まで遡ることが出来ます。八重山諸島に自生する植物による草木で染められるその麻糸は、苧麻糸(ちょまいと)と呼ばれる人間の手で糸績みされた麻糸(緯糸として)を使用します。
同じ苧麻糸で織られた上布との違いは、南国を想わせる色鮮やかな彩色と琉球染織特有の絣文様が織り込まれることです。
八重山上布一反織り上げるのに要する時間は、糸を機に掛けてから、2ヶ月あまりは掛かると言われています。
機織りをはじめる以前に、糸染めや糸整理などの時間を考えると、膨大な時間と手仕事を必要とされる織物なのです。

お単衣の装い...、夏久米島と桶絞り染め帯

夏久米島五月も中頃となって参りましたので"きものあわせ"も、そろそろ"お単衣"を考えてみたいと思います。

今回は、まず"余所行き"を意識した"着物と帯のあわせ"を取り上げてみます。

掲載をさせて頂いたのはお単衣/夏季を予定して久米島で織られた絹織物です。久米島紬と言えば、緯糸に真綿糸が使われるのが普通ですが、お単衣/夏季に向けて織られる久米島紬は緯糸に"単衣を意識した撚糸"が使われています。
手触りは、真綿糸が使われている久米島紬とは、全く別の織物の質感が感じられます。"さらっ"とした単衣/夏季の織物特有の質感です。

色目ですが"きなり"としてみえるかもしれませんが、琉球椎なる琉球織物では比較的よく使われる植物から煮出した色で糸染めが施されています。白色、きなり...、と言うよりもオフホワイトと言った感じです。

余談ですが..、久米島は東シナ海の離島なんですが、無地織...、特に"ゆうな"や"琉球椎"で糸染めされた無地織は、どこか垢抜けした印象が感じられるのです。

お単衣/夏季+オフホワイト+無地織...、ここでは夏久米島を取り上げていますが、こうした組み合わせの織物、または染のお着物は、"もの"に質感が伴わないと"平たい"印象になってしまう傾向が強いので、お着物を選ぶ際に意識的に質感の高いお品を選ぶ必要があります。

夏久米島は、植物染料で糸染めをされ、緯糸を入れるのも"杼"を投げて織られた手織紬です。無地織であっても"深い"んです。
着物としてお仕立てをされると反物以上に質感が浮いて来ます。


この無地織に"あわせ"たのは、紬地に桶絞りと小紋染めが施された染め名古屋帯。紬地と言っても真綿の感触よりもう少し"さらっ"とした手触りがする生地です。
江戸時代の小袖文様が写された染め帯です。
単純に紬地に染めたのではなくて、桶絞りが施されているため、立体感が伝わって来ます。

この桶絞り染めの帯は、特に"単衣"を意識して染められた訳ではありません。
袷の季節でもお使い頂いても良い帯地ですが、ここでこの染め帯を取り上げたのは、着物は単衣と夏季、帯は袷から単衣までと、着物と帯の他の季節を踏まえた使い回しをも考えてみたかったからです。


桶絞り小袖文様染め帯この桶絞り染めの帯と琉球椎の夏久米島の"あわせ"のポイントは、色目のバランスと無地織の着物に対して桶絞りと言う質感ある帯と言う対比を考えてみました。

琉球椎/オフホワイトの無地織は、決して"平たい印象"がある訳ではないのですが、遠目からみるとどうしても「白」として眼に映りがちです、それに対して帯をあまり"あっさり"させるものちょっと...、"あわせ"としては面白くはないような気がするのです。
単衣と言う時季を意識すると、"くどい""重い"印象の帯も控えるべきかと思います。

掲載した桶絞りの小袖文様は、大柄な文様でありながら、彩色の数も控えられているため、"くどさ"や"重さ"と言った印象もなく...、"薄色"の着物に対してならば、単衣的な使い回しが出来るんです。
また、この帯の素材感も、単衣として使われると"より単衣っぽく"感じられるのは面白い事なんです。


こうした"着物と帯のあわせ"のTPOを考えると...

以前、菊池洋守氏の薄色の綾織と西陣織名古屋帯との"あわせ"でもご紹介した"「きちんとした」感じよりも少しだけ「余所々々しい」感じ..、「普段」とは「違う」よそいき感"の「あわせ」"に近いと思います。


    *食事会や同窓会などの"集い"や"宴"。
    *ギャラリー/画廊などでの催し。
    *美術館/博物館などの展覧会。
    *オペラ/クラシック、歌舞伎などの舞台鑑賞。

など..、と言うことになりますが..。

先に、琉球椎で糸染めされた無地織の夏久米島が"垢抜け"した印象が伝わってくるとお話をさせて頂きました。
一方、桶絞りと小紋染めにて表現されているのは小袖文様写しです。この"小袖文様"とは、そもそも江戸時代の華美なる着物だった訳です。"きちん"とした着物から写された文様なんですね。
垢抜けしたオフホワイトの無地織に"かつて華美だった"小袖文様写しの帯との"あわせ"なのです。

"単衣"の季節..、どこか涼感を想わせ、都会的で、ちょっと余所々々しさのある"着物と帯のあわせ"となります。

麗しき手描き京友禅...、絽染帯"扇面に紫陽花"

紫陽花 染め帯扇面に紫陽花が染め描かれた手描き京友禅の染帯。

夏季が表現されている訳なんですが..、その季節感を想う以前に、この「京友禅」の秀逸さに息を呑んでしまうんです。

何かを真似て出来ると言う程度の仕事では決してありません。

琳派が意識されたその趣向は、琳派を写しているのではなくて、琳派そのものを想わせる程に優れています。

京友禅は、職人の分業で製作される訳なんですが、この染帯に携わった職人は、それぞれの仕事の分野で最も"うるさい仕事(精緻な仕事)"を手掛ける人たちなのです。

しかし、すべて手仕事ですから、その時によってコンディションに差が生じる事もあれば他の職人との調和が適っているかどうかも、最終的な出来に影響を及ぼすものです。

この染帯に施された仕事は、すべての仕事において秀逸なのです。

どこが綺麗..、どこが良い..、と言う事ではなくて、図案としても、色の感性としても、友禅の感覚としても、箔の加減としても...、手描き京友禅として調和が取れているのです。

数多の京友禅を観ていると、こうした極上とされる仕事が施されたお品に触れる機会があります。
何時でも「あるもの」でもあるかもしれませんが、必ずしも"そうでない"。
実は、同じ職人が手掛けても「何か」が違うと、綺麗で極上であるかもしれないけれども..、綺麗であり、そして、極上である言葉で表現される..、「それだけ」で留まってしまうものなのです。

やはり、手描き京友禅は、それぞれの仕事を専門の職人が手掛けることで誂えられるため、すべての仕事にデリケートな調和が整った時、言葉では尽くせない感動を伝えてくれるお品が生まれる様なのです。

この「扇面に紫陽花」の染帯です..、写真が画像では、お伝えできない程、実際のお品は本当に感動的です。