品川恭子染色作品/唐衣..、染め九寸名古屋帯

品川恭子 染め名古屋帯 唐衣品川恭子氏の染色作品のご紹介です。

染色家の作品と言うと...、彩色や構図、趣向、または染色技法そのものを通じて作品個性が表現されることがあります。
眼が慣れてくると、ひと目で誰が手掛けた作品なのかを知ることも難しくはないと思います。

品川恭子氏は、その類の染色家ではないと思います。

際立った染色技法にこだわったり、彩色印象に偏ることはないようです。

かと言って、職人的とは到底思えない...、染め描かれた作品には、いつも独創的な印象が感じられます。

染め描かれた「柄模様」は絵画的、または意匠的な印象を伝えることが多いのです。
職人が下絵から写し描いたものでもないし、染色家の趣向ともちょっと違うような気がします。また、彩色遣いも他の染色にはあまり見掛けない遣い方を見られます。

画人が描く一枚の画のような趣が漂っている。

この染め帯も、具体的な何かを染め描かれているかどうかというよりも....、ちゃんと感じられる「何か」があるのです。
想いのままに描いたものが染め描かれているから、制作者の感性とか趣向みたいなものが作品の中に感じられるのだと思います。

奔放で、豊かな感性が伝わってくる作品です。

真綿紬と型絵染め || 士乎路紬と柚木沙弥郎..、"着物と帯のあわせ"のCocept

士乎路紬と型絵染め9月も下旬となりました。

暦では、秋である筈なんですが、名古屋は残暑厳しい日が続がついています。
天気予報を見る限りでは、秋らしい日が訪れている街は、どうやら全国的にも、まだまだ少ないようですね。

ただ、暑い/寒いに関わらず、着物には季節や時季に応じた装いのStlyeみたいな「お約束的」なものがあるようです。

「お約束的」なものとは別に、着物もFashionのひとつとして捉えれば、季節感の先取り..、実際の季節よりも一歩先の装いを心掛けると言う気持ちは、着物を楽しむ上で、大切な姿勢だと思います。

お着物の季節感とは違うのですが..、目紛るしく移り変わる洋服のHi-Fashionにおいての「季節/Season」に対する感覚を想ってみると...、確かにFashionはSeasonをいち早く先取りして行くものとされているですが...、これは寒さ/暑さと言う体感的な視点と言うよりも、次のSeasonには、どんなColorが来るのか? どんなStlyeが来るか? などのFashionの傾向を掴むニュアンスが圧倒的に強いようです。
要するに、Hi-Fashionにおける季節感とは、Seasonの傾向を敏感に感じて、装いに取り込む感性のようなのです。

さて、"着物と帯のあわせ"についてのお話です。

秋の単衣"着物"から袷"着物"に移り変わるこの時季です。
着物や帯がもたらす"季節感"についての"お約束的"なお話も良いかも知れませんが...、ここでは"着物と帯のあわせ"の視点、Conceptについてお話をしてみたいと思います。


着物には、洋服のFashionのようなめまぐるしい移り変わりはないかもしれません...、でも、季節に対する着物や帯の素材や柄模様などの配慮はもちろんのこと...、どこに何を着て行くかと言う姿勢は、着物を楽しむためには、とても大切なことなのです。

それは"着物と帯のあわせ"の基本姿勢のようなものです。

Hi-FashionがSeasonの傾向を感じ取ることで、そのSeasonのConceptをつくり込んで行くに対して、着物は、着物を着るその人の美意識がConceptとなるべきなのです。

秋になれば...、いち早く何となく秋と想わせる着物/帯を使うと言うのも美意識のひとつです。
また、着物や帯の素材やその存在感...、素材感とか存在感、空気感と言う曖昧かも知れませんが、着物と帯を"あわせ"ことで漂う空気感/雰囲気をひとつのConceptとする装いの意識もあるべきかと思うのです。

柚木沙弥郎 型絵染め+士乎路紬こちらに掲載をさせて頂いた着物...、真綿紬は士乎路紬。泥染めされた真綿糸を織糸として織られた手織紬。
帯地は、染色家.柚木沙弥郎氏の型絵染め帯。

Conceptは、民芸的な装いを意識した"着物と帯のあわせ"です。

色印象は、これからの季節を意識した落ち着いた色を基調としていますが、天然染料を使うことで、単純に"落ち着いている"と言うだけではなくて、眼に映る以上の"色印象"を感じさせています。

手織紬の織り込まれた格子は、定規で引いたかの様な線と線の交わりでなく、どこか曖昧な感じ...、手織真綿の質感がこうした"味のある"表情をつくっているのです。

帯に染め描かれた型絵は、まるで陶器の絵付け、または前衛的なテキスタイルデザインを想わせます。
(*ちなみに、柚木沙弥郎氏は女子美術大学の学長を務めた程の染色家なんです)

こうした手織紬/着物も帯地は、単なる製品として"つくられた"ものと言う感じはありません。
手掛けた織人や染色家が、ちょったした美意識..、使うため(実用)+αをこめて手掛けたと言う感じが残っているのです。

単なる"紬"とか"帯"なる製品ではなくて、制作者の意識が感じられる着物と帯...、ちょっと目の利くひとが、眼にすると「何か」を感じる着物と帯なのです。

"民芸"と言うConceptの"着物と帯のあわせ"は、日常の街着ではありません...、なぜかそれ以上の雰囲気があるのです。
かと言って、"はなやかな席"での"あわせ"でもない。
"余所行き"にはと言っても...、少しだけ落ち過ぎている。

"特別な日常"と言う表現が許されるならば、それに近いかも知れません。

"芸術の秋"とされる季節...、街の中には創造的な時間を楽しむ空間が多くなる季節です。
気候的な"秋"だけではなくて、"秋"と言うSeasonがつくる街の空気を掴んで、Fashion/装いで表現する。

民芸的Conceptの"着物と帯のあわせ"は、こうした季節/Seasonに似合う"あわせ"ではないでしょうか。

品川恭子染色作品/おおらかなる雪持ち芭蕉..、染め九寸名古屋帯

品川恭子 芭蕉品川恭子氏の染色作品のご紹介です。

「雪持ち芭蕉」が染め描かれた染め名古屋帯。

薄い象牙色の中に描かれた雪持ち芭蕉は、おおらかな空気感に包まれています。

友禅と言うよりも一枚の「絵」を眼にしているような感覚を憶えます。

九寸と言う帯巾の中に窮屈さを感じさせない構図は、芭蕉の葉という自然のモチーフに生命感のようなものを表現しているかのようです。

多くの彩色を施すわけではなく、細かく描き込んでいるわけでもない...、感性に任せて想うままに絵として描いている...、そんな感じが伝わってくるのです。

素材は紬糸が織り込まれた絹布...、紬地と言う程でもない、ちょっとした柔らかさのある絹布です。
どちらかと言うとお単衣に使われるふわっとした素材感があります。

北村武資・品川恭子 染織作品展 

品川恭子 花紋 訪問着*北村武資/品川恭子 染織作品展

*会期:10月4日(木曜日)〜6日(土曜日)

*場所:名古屋. 栄 妙香園ビル3F画廊(map)

*この度の作品展では、正統的な織と染に研鑽を重ねることで独自の作品性を展開するに至った北村武資氏と品川恭子氏の二人の工芸作家の作品をご紹介致します。
貴き織物と優美なる染色の世界を堪能頂く展覧会です。


出品予定品目
北村武資:経錦 煌彩錦 斑錦 羅
品川恭子:訪問着と染帯 


*尚、この度の作品展は、画廊/ギャラリーにて公開作品展と言うスタイルを予定していますので、お気軽にご来会頂けます。
(但し、同業者/業界関係者のご来展、お問い合わせはお断りを致しております)



この展覧会は終了致しました。
有難うございました。

西陣織の豊かな美しさ..

西陣織九寸名古屋帯眼にしていて...、とても素敵な帯地じゃないですか...。
品位もあるし、洗練された感性を感じさせる。

こうした印象は、西陣織の本来的な趣向じゃないかなと思います。

この帯地ですが、一般な西陣織と比べ出すと、もしかしたら少々地味かも知れない。
でも、黒い背景の中で、浮き上がるその姿は、綺麗...、と言う麗句が漏れてもおかしくはない程です。

何の型でしょうか? 
まるでモザイクのような模様が織り込まれています。

でも、この模様が何であるか..、何に見えるかは..、まるで制作者の謎かけのようであり、また、「何に見えても良いよ...、それは見るひとの気持ち次第です」と言っているかのようです。

それでも...、例え、その答えを教えられなくても、気分が悪くなることはない様な気がします。

地味かも知れないけれど、綺麗と感じられるのは、見た眼の綺麗さや美しさに惹かれているのではなくて、きっとこの帯地の姿の中に込められているものが琴線に触れたのだと思います。

まるで"ひと"に惹かれると言うことに似ていますね。

この西陣織に「綺麗」と感じるのは、洗練された感性とか品位と言った内面性みたいなものに対して感情が反応したからだと思います。

こうした西陣織に触れていると、"ただ綺麗なだけ"ではダメなんだなと思い知らされます。