疋田摺り辻が花：染め帯
『小袖模様写し』

紬地に染められた椿と垣の柄模様は、古い小袖の図案から着想を得てデザインされています。この染め帯には寓話を想わせるような文芸的な空気が感じられます。
単純に、椿と垣を組合せて描かれたデザインではなくて、椿の咲く庭の風情を想い詠んだ和歌あたりが、この染め帯の出典になった小袖には、染め描かれていたのかもしれません。

この染め帯には、友禅挿しで彩色が付けられた箇所はありません。辻が花と疋田摺りだけで図案と彩色が表現されています。椿のデザインもひとつひとつ表現を変えることで奥行き感が生まれ、疋田で表現された垣は、あたかも影のように映っています。
辻が花には、桶絞り染めとカチン描き（墨描き）で仕上げられ、加えて疋田摺りが施されています。それぞれの職人の手仕事が重ねられることで、この染め帯の存在感がつくられています。古典的な美しさを現代に甦らせているような染め帯です。
紬のお着物などとあわせてお楽しみ頂けます。