手織真綿紬:士乎路紬『紫格子』
墨色に滲むような紫格子が浮き上がるデザインの紬織物は、あまり見掛けることはありません。格子の織物にも関わらず、格子のイメージさえもあまり感じられません。
巾の違う縞と縞、緯と経を組み合わせて構成されたデザインは、彩りが重なっているように見えて来ます。それは、どうやら、この幾何学的なデザイン性から生まれた軽い錯視なのかもしれません。
真綿の柔らかな温もり感と草木染めを絡ませた自然由来の彩り、そして、このデザイン性が調和して他の織物にはない格別なイメージがつくられています。古くから土地に受け継がれて来た織物にはない士乎路紬ならではの美意識に満ちた作品です。
=士乎路紬=
士乎路紬(しおじつむぎ)は、能登半島で織られている100%真綿糸が使われた手織紬。
この士乎路紬は、一般的には、あまり聞き慣れない織物なのかもしれませんが、そもそも、土地に根ざした伝統的な織物ではなくて、日本のあらゆる織物を研究した後に、1970年代に立ち上げられた工房織物として制作されている紬織物です。
ですから、過去より継承された織物でないため、制作手法に制約や縛りがなく、 着心地のための"素材感"と"デザイン性"が錬られ、制作された真綿織物です。
士乎路紬の特徴は、本場結城紬と同様に、経糸と緯糸に、手引きの真綿糸が使われていることです。それも、よくある屑繭からつくられた紬糸ではなくて、綺麗な蚕を袋真綿にして引き出された真綿糸が使われています。そのため、生地に重さを感じられない程、軽く、暖かい、本場結城紬を感じさせる素材感を感じさせてくれます。
そして、士乎路紬にはもうひとつ特徴が挙げられます。それは、この上質な真綿糸に、一般染料に加えて、草木染めが施されている事です。天然染料が使われているため、空気をはらむ素材感に、柔らかで、奥行きのある色味が加わっています。
手織真綿の軽さと草木染めの柔らかな色印象は、士乎路紬ならではの魅力です。
* | 草木染め手織紬:士乎路紬『紫格子』と帯のあわせ.. |
・ | 洛風林:九寸名古屋帯『花十字文』とあわせました。 |
・ | 草木染め手織綿織物八寸帯(制作:北川弘繪)とあわせてみました。 |
・ | 洛風林:八寸帯『彩層文』とあわせました。 |
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