久呂田明功 制作
東京友禅：ちりめん染め帯
『南天に垣根菊』

久呂田明功は、東京友禅の染色家。
しかし、東京友禅を捜しても、久呂田明功のような作風の友禅をみることはありません。久呂田明功の作品には、花鳥風月や季節を想わせる草花が、類をみない美意識で表現されています。だから、真似ることや写すことは出来ても、染め描かれるテーマを誰かが久呂田明功風に新たに展開することは出来ないのです。それが東京友禅の中で久呂田明功の様な友禅の世界感がない理由なのだと思います。

この制作者の作品印象は、友禅と言うよりも、むしろ、絹地に描かれた絵画の様な存在感に満ちています。

こちらに掲載をさせて頂いた作品に染め描かれているのは「菊」と「南天」、そして、疋田模様で染め描かれているのは、どうやら竹の垣根の様です。この染め帯には、垣根の傍に咲いている「菊」と「南天」が染め描かれているのです。

黄色い菊、白い菊、南天の実、そして菊の葉．．、それぞれが明確に主張をしています。その"かたち"も、その"彩色"も、それぞれが個性としての趣を持っている．．、それにも関わらず、ひとつの"絵画"の様にキャンバスの中に、"かたち"が、"彩色"、そして、"趣"が、制作者の美的な感性によって、美しい調和を保っているのです。単純に、花を描き、季節を表現されているのではない。
美しい自然の風景や季節感覚が絵画的に表現されているのです。
コントラスト感覚のある景色であっても、見飽きることはありません。

錦織/唐織の様な装飾性が感じられますが、染め帯特有の、柔らかな空気感を保ちながら、艶やかさを伝えてくれます。

秋から冬の掛けてお使い頂ける染め帯です。

東京友禅：久呂田明功.作品