こちらに掲載をさせて頂いた作品には、黄・鳶・黒の三色が、細密、かつ、巧妙な綾織で織り出されています。黄は一色、鳶は二色(鳶色とピンク系)、黒は一色(グレイ)。そして、絹の地色として白が加わり、彩りを構成しています。
目を近付けて見ると、パステルイメージの綺麗な色彩が絹の艶感と相俟って煌めいています。細かい色彩が、無作為に鏤められているかのようにも感じられるかも知れませんが、その色彩は、狂いなく、完璧なまでに織り分けられています。

そして、何より不思議なのは、少し距離をおいて見ると、細密な色彩は、綾織の中に沈んで行き、僅かに黄と白みを帯びた薄グレイ色(？)として目に映ります。色グレイに黄が掛かった色印象かも知れません。また、光の加減で、その彩りの気配は移り変わって行くと思います。
光の加減で彩りの感じが変わる黄八丈は、これまでなかった訳はありませんが、この作品ほど細密な綾織で三色が構成され、そして、彩りのイメージを変えて行く作品は知りません。

自然から得られた素材と伝統的な古法だけで制作されているにも関わらず、極めて新しい存在感が感じられます。けれども、衒いなどない無垢な美しさに満ちているさまが伝わって来ます。

画像では捉えきれていません、透明感を伴った彩りが魅力の美しい草木染め絹織物です。