真糊糸目と京繍 付下：『波尽くし』

波と波が連なり流れるかのような波の光景が染め描かれています。真糊糸目で染め描かれたこの『波』からは、シンプルなデザインでありながらも、緊張感と奥行きが心地よく調和した空気を感じさせてくれています。色彩イメージは、挿し色を一切控え、「地色」と「染め暈かし」だけで表現されています。このシアン(薄紫系)の地色とブルー系の染め暈かしが伝える色彩イメージが、凜とした波の光景に僅かな華やぎを添えているのかもしれません。
礼装と趣味性の絶妙なバランスが図られています。品位を伴った日本的な美しさと趣の漂う付下です。