柳 晋哉 制作:九寸名古屋帯
『小柳市松染分-Blue×Blue 』

柳晋哉氏は、大正末期、民藝運動を主導した柳宗悦の甥で染織家であった柳悦博氏を祖父に、同じく染織家である柳崇氏を実父に持つ染織家です。晋哉氏の作品には、「柳家の織物」を感じさせる存在感があります。それは、祖父柳悦博氏より継承されて来たデザインや技法に留まらず、織物制作に対する美意識が生きているからなのかもしれません。

こちらに掲載をさせて頂いている「綾織染分：九寸名古屋帯」は、草木染め、四枚綜絖の綾織、段熨斗目、絣を組み合わせることで制作されていますが、悦博氏が制作した「絣段熨斗目」を現代的な色彩とデザイン構成することで、作品性が展開されています。また、過去に制作された作品とは違うデザイン構成の作品であっても、この「柳家の織物」の存在感は褪せることはありません。

こちらに掲載をさせて頂いている名古屋帯は、綾織が市松に織り出された「小柳市松」織で制作されています。重ねられた綾織で構成された市松に加えて、BlueとBlue、濃と淡、ふたつのblueは、単純な市松織に比べて、穏やかな奥行きが生み出されています。市松綾織の緯段だけのシンプルなデザインにも関わらず、柔らかな深みを憶えるのは、色彩と小柳市松、そして、絹の艶感が美しい調和を奏でているからなのかもしれません。