池深雪 作
型絵染め九寸名古屋帯:『残雪』

こちらに掲載をさせて頂いた型絵染め帯をご覧になると少々不思議な印象を抱かれるかもしれません。
何が描かれているのか？ 赤や水色のデザインは何を表現しているか？ けれども、この不可解さには、嫌な感じはなく、穏やかな感性が型絵として表現されています。
この作品、鳥のようにも見えるし、花のようにも見える。また、胡粉で白く描かれた箇所をしばらく見ているとイラストのような絵が見えてくるかも知れません。

この作品には『残雪』というタイトルが付けられています。
描かれてるのは、寒い冬が終わりを迎える頃、作家が想い出した「椿に積もった雪景色」。雪が失せた椿が目に映った時、心に浮かんだ冬の記憶、戯れに近い想い付きかもしれないけれど、透き通るような無垢な感性として表現されています。深い緑とあざやかに彩られた椿に、消え失せた雪は、作家の心の中に際立ち美しい白(残雪)として残っているようです。
抒情的な薫り漂うアーティステックな型絵染め作品ですね。