鈴田滋人 制作
木版摺更染め帯『猩』

鈴田滋人氏は、「木版摺更紗」との分野で重要無形文化財技術保持者(人間国宝 )の認定を受けた染色家です。
鈴田氏の「木版摺更紗」は、江戸時代まで鍋島藩の中で、一子相伝、かつ、口伝のみで伝えられて来た鍋島更紗の復興研究で培われた、地形を表現する「木版」と色摺を加える「型絵」を併用する唯一無二の染色手法です。

こちらに掲載をさせて頂いた『猩』は、令和5年第57回西部伝統工芸展で発表された作品デザインを元に制作された作品。
線と線、色と色が構成する理知的な幾何学的デザインとして映るかもしれません。けれども、この作品から冷たい印象は伝わって来ません。むしろ、心地良い陽光を浴びているかの様な感覚を憶えます。細密で鮮やかな彩りが添えられた木版摺りが表現する世界観は、鈴田滋人氏が見ている植物の光景の様です。「花」や「葉」、「枝」が描き出されています。光や温もりが感じられるのは、この作品のテーマのせいなのかもしれません。
アーティスティックな空気さえも想わせる染色作品です。