手描き友禅 塩瀬.染め帯
『薄色裂取草花』

柔らかく、そして、色の奥底に凛としたものを感じさせる綺麗な"地色"．．、ほんの少しだけ朱を帯びているのかもしれないと想わせる薄肌色がこの染め帯の地色なのです．．、この地色の印象がそのまま、この染め帯の印象となっているようです。
この友禅から伝わってくる"薄色の美しさ"に、ついつい見惚れてしまうのではないでしょうか？

この染め帯は、そもそも、琳派の絵画を手本として図案がおこされているようです。とは言え、琳派から想い興される硬質な印象はありません。
どこか凛としたものを感じさせながらも、柔らかく、透明感をも伝えるその印象は、琳派印象とはそのまま重ならないかもしれません。
むしろ、染め帯である．．、真糊を用いた手描き友禅であると言う先入観を外にして見てみると、ちょっと洋花的、西洋的な空気さえも想うことが出来ます。かといって、西洋的な「画」を染め描いたと言う意識は微塵さえも感じられない．．。

この染め帯を手掛けた染人は、神経質なほど丁寧な仕事を施しています。
花、葉、蕾、実．．、それぞれの"線"には、膨らみがあり、静かな勢いのような感じを残しています。それは型や枠にとらわれない染人の"手"から生まれる"画"の生々しい質感や緊張感として伝わって来るのです。そして、この染め帯の印象をつくっている"彩色加減"は、染め描かれた図案に、まさしく"色を付けて"．．．、存在感を決定付けています。
琳派の図案が、どこか"凛"としながらも"柔らかく""透き通るかのような綺麗さ"となっているのは．．、この染人の仕事の巧さなのです。

とても綺麗な染め帯です。
礼装のために、お茶席向きに..、と言った特別な目的を意識するまでもなく、どこか凛とした美しさと綺麗さが、まるで芳香のように伝え香ってくるのです。