洛風林制作：八寸名古屋帯
『近東獣文』

工芸帯地"洛風林"制作の絣織八寸名古屋帯。

掲載をさせて頂いている八寸名古屋帯は、絣織を使い柄模様が表現されています。これは、絵緯糸で柄模様を表現する一般的な西陣織とは違い、予め織り出す柄模様の部分だけを染め分けた糸(絣糸)を使い、柄模様が表現されています。要するに、絣模様の紬のお着物と同じ手法です。生地の裏に糸が通っていないため、とても軽くて、扱いやすい生地感覚が、この帯地の特徴のひとつです。

織り出されている柄模様は『馬』。鬣(たてがみ)を靡かせ、颯爽と前足を高く上げたその馬の姿は、まるでパステルで描かれたかのように織り出されています。柔らかで、温もりある生地感覚は、紬糸が使われた絣織特有の質感です。

この八寸帯には『近東獣文』との銘が付けられています。「近東」とはヨーロッパからみた東方の国々を指し、どうやら、現在のトルコ、エジプトなどの国々のようです。
白色を背景として、ブラウンの濃淡で「獣文」を織描き、植物をブルーで表現する辺りは、近東の国々の乾いた空気感までもが表現されているようにも感じられます。色彩とデザイン、柔らかな織の質感が調和して、どこかエキゾチックで、軽く洗練された雰囲気は、工芸帯地洛風林ならではの美意識から生まれて来ているのでしょうね。

カジュアルスタイルのイメージがある八寸名古屋帯の中でも、紬織のお着物の雰囲気を少し上げてくれる予感のある作品です。

制作：洛風林