城間栄順 制作
琉球本紅型.九寸名古屋帯
『石垣に芭蕉干し』

琉球本紅型の宗家.城間栄順制作の本紅型九寸帯です。

＜石垣に芭蕉糸干し＞と銘が付けられた作品。そもそも、この"型紙"での紅型作品は、城間家に伝わる代表的な"作品"とされている様です。

この＜石垣に芭蕉糸干し＞は、沖縄の風俗観みたいなものが、紅型という染色手法を通じて、とてもよく伝わる作品なんです。
特に、城間家特有の彩色が施されると、遙か昔の沖縄の風俗画の様な印象を憶えます。
石垣の白さ"は、沖縄の陽光の強さを想わせるし、芭蕉の葉の色加減は、時の移ろいをも写しているのかもしれない。また、東屋からは"いない筈"の"ひとの暮らし"の気配が伝わってくる。
琉球紅型は、その主題に、沖縄の風俗や自然を取り上げた作品は少なくはありません。けれども、この＜石垣に芭蕉糸干し＞のように、そこに描かれている"ものが、まるで"語りかけてくる"かのような作品は他にはないと思います。
この＜石垣に芭蕉糸干し＞は、琉球本紅型ならではの彩色と風景を伝えているし、また、琉球本紅型でしか表現出来ない空気感があるんです。
琉球本紅型の宗家である城間家に、こうした作品が伝承されているのは、しかるべきなのかもしれません。

帯としてこの＜石垣に芭蕉糸干し＞を想うと．．、趣向に満ちた手描き友禅にもない、工芸的な"型絵染め"にもない、特有の空気に満ち溢れている。その空気は色濃いけれども、親しみがこもっている．．、だから、帯として楽しんでみたくなるのです。