山本由季 制作
薄絹染め九寸名古屋帯

染色家.山本由季.制作の染め九寸名古屋帯です。

この制作者の作品印象は、「いつも、こんな感じ」です。
40年以上、染色による作品制作を続けられている様ですが、私が知るこの20年の作品印象は「いつも、こんな感じ」だったと思います。

花があって、動物がいて、虫もいる。描かれたそれらは、あたかも、かすかな風に吹かれている様子で、微睡む様な陽光を浴びている．．、そして、のんびりとした空気を漂われている。
だから、彩色は、いつも穏やかで、柔らかに満ちている。落ち着いた彩色であっても．．．、例えば、黒色印象であっても、この制作者の作品印象には"暗さ"を感じさせることはあり得ないのです。

もしかすると、森の奥の世界をこうした「絵」を通じて表現されているのかも知れない。そして、「いつもこんな感じ」なのは、制作者の中の「森の空気」が変っていないからなのかもしれません。
制作者自身の美意識を表現するために染め描かれたのではなくて、湧き上がる印象風景が染め描かれているようです。

こちらの作品は、薄絹に花の図案が染め描かれています。
大きな花びらが、穏やかな風の中に舞っているかのような印象です。「いつもの感じ」です。薄ピンクは、夏の空気を表現している様に感じられます。直接、眼に映る訳ではない陽光や温度を、色彩と素材を活かすことで、表現が図られているのかもしれません。季節が染め描かれている訳ではないけれども、思い掛けず感じる涼感や鮮やかな空気が伝わって参ります。
お単衣/夏季のお着物を柔らかな空気で飾ってくれる染め帯です。